2012年4月24日火曜日

人を動かす  カーネギー

経営者の間では有名なアメリカのカーネギー氏の書籍「人を動かす」より、人を動かすための秘訣部分を抜粋しました。

書籍「人を動かす」 著者:カーネギー
①相手を非難するかわりに、相手を理解するように努めよう。
②相手を認め、相手に重要感を持たせよう。
③相手の立場になって考え、相手の心の中に強い欲求をおこさせよう。

(コメント)
時代が大きく変わり始めた今こそ新しいタイプのリーダーが渇望されています。そして今、リーダーシップのあり方が変わり始めています。
現代の平時(緊急時を除く)においては、一昔前のように率先筆頭型で部下を強引に引っ張っていくリーダーではなく、コーチング等に見られるように、部下に方向性を示し、部下を動機付け、部下自らの意思でやってもらうタイプのリーダーが必要とされています。
一見ひ弱なリーダーのように見えますが、飽食の時代となり、人々の価値観が変わった現代において協働して目的を達成するためには、新しいタイプのリーダーの方がより有効なのだと思います。
このタイプのリーダーであれば、最近急増している鬱病などの精神疾患に部下が陥ることを防げるかもしれません。

2012年4月23日月曜日

PFドラッカー365の金言より  オマケの8(最終回)

PFドラッカー先生は「機会(チャンス)は自ら見つけるものであり、やってくるものではない。」と言われていますが、どうやってチャンスを見つければ良いかも教えられています。

<< 本文 >>
機会を見つけるためには、予期せぬ成功と失敗を利用する。

(コメント)
「強みを活かせ」とよく言われますが、自分の強みに気づくことが一番難しいことなのです。
論語でも「自らを知るものを智者という」とされています。
自分自身の「強み」と「弱み」に気づくためには、「最初に何を期待してモノゴトを始めるのかを書き出しておき、それを実際の成果と比較することである」と先生は別の箇所で教えられています。
こうすることで、「最初には予期しなかった成功」と「予期しなかった失敗」に気づけるようになり、その中から自分の「強み」と「弱み」を見つけ出すことができるのです。最初の自分の「思い」と実際の成果を比較することで、自らの「強み」「弱み」に気づくことができるようになるのです。
先生は「これはキリスト教カルビィン派の修道僧が数百年前から行っていることである」と紹介されています。
チャンスを見つけ活かすことができるようになる為には、まずこの第一歩を踏み出す事が必要です。

2012年4月22日日曜日

PFドラッカー365の金言より  オマケの7

<< 本文 >>
意思決定は速さが重要なのではない。
意思決定すべき事柄を増やしてはならない。
意思決定は速さではなく、その内容が重要である。
そして、意思決定には集中が必要である。

(コメント)
先生の言われる通りだと思います。
私もシバシバ意思決定を急ぐ余りに判断ミスをしてしまうことがあります。そのため、意思決定には「焦り」が大敵であると肝に命じています。そして判断ミスに気づいたときには素直にミスを認めて誤り、修正するように心がけています。基本的に意思決定は時間との競争状態になりがちの傾向がありますから、時間的に追い込まれない工夫をすることが必要です。ブレイクスルー思考法では「壊れる前に直せ」という原則があるので、これを習慣化することが追い込まれた意思決定をしないためには大切です。
そして、意思決定には「集中できる環境」をつくることが先生の言われる通り必要だと思います。忙しい最中に片手間に重要な意思決定をしてはいけません。ミスをする原因となります。また、疲れいてるときや、深夜時間帯に意思決定をしてはいけません。独善的な判断をしてしまいます。私は、重要なことは業後に考え直し(その場で直感で判断もするが公言はしない)、しかも一晩自分の頭の中で熟成させ、そうして早朝に再度考えたうえで最終の意思決定するようにしています。何故なら、早朝の時間帯は誰にも邪魔されることなく、電話もなく、冷静に、かつ論理的に考えることができる「集中できる時間帯」だからです。そして更に、最も重要な事柄は3回(3日)考え直すようにしています。その上でベストと自分が思えるものを選択する決定を下します。
更に、PFドラッカー先生は「意思決定すべき事項を増やしてはならない」とも教えられています。その為には、権限移譲すること、自分ひとりで抱え込まないこと、意思決定すべきことに優先順位をつけること(「急ぐ」ことからではなく「重要」なことから決定を下す)を普段から心がけることが大切です。

2012年4月21日土曜日

PFドラッカー365の金言より  オマケの6

<< 本文 >>
人は強みを活かして初めて何かができる。何かをすることによって、何かを達成できる。

(コメント)
何やら意味難解な文章です。
ここで先生は『人は自分の強みを発揮することで、初めて自分がやろうとしていることが達成できる。しかし、何もしなければ何も達成することはできないのだから、何かをやり始める(思い考えるだけでなく、実際に行動する)ことが大切である』と教えられたいのではないかと思います。
また、「強み」に関してですが、「強み」とは絶対的なものではなく相対的なものであることにも注意することが必要です。同一人物でも、レベルの高い人たちが沢山いる中ではその人の持つ特定の能力はその人の「強み」とはなりません。しかし、レベルの低い人しかいない状況の中では、大してレベルが高くない能力でもその人の強みとなります。従って、「強み」とは自分の持つ能力と周りの人達が持つ能力の相対によって決まるものなのです。
私はこの「強み」に関しては、大学の経済学で学んだ国際取引における比較優位の法則を思い出します。A国とB国が製品(a)と製品(b)を生産していると仮定します。そしてA国は(a)(b)製品のいずれにおいても生産能力がB国よりも優れており、更にはA国内において(a)(b)両製品の生産能力を比較すると(a)製品の能力が秀でているとします。この状況下で最大成果を生むためには、A国が(a)(b)の両製品を生産するのではなく、A国は(a)製品だけを製造し、(b)製品はB国が生産することが必要となります。
人間の「強み」に関してもこれと同じことが言えます。あらゆることに優れた人がいたとしても、その人が全てを行うよりも、その人の最も得意とする「強み」を発揮できることをその人は行い、他はほかの人に任せることが最大成果を生むことになります。そうして組織のテコの原理を活用すれば、「1+1=2」ではなく「1+1>3」となるのです。
ただし、繰り返しになりますが、思い考えるだけでは何の成果も得られません。実際に行動する勇気をもち、行動を開始することが大切です。

2012年4月20日金曜日

PFドラッカー365の金言より  オマケ の5

<< 本文 >>
成果をあげるためには「貢献」を中心に考える。そのためには、
①顧客は誰か?
②顧客にとって価値あるものは何か?
③顧客にとって価値あるものに、あなたは何で貢献するのか?
④あなたの顧客戦略は何か?

(コメント)
事業活動の基本とすべき考え方だと思います。
①どんな顧客を主たる顧客とするのかを明確にすること
②その主たる顧客が価値があると考えるものは何かを考えること
③その価値あるものに、自分としてはどのように貢献しようとしているのかを明確にすること
④そのうえで、自分の営業戦略を考えること
が必要であると言われています。
しかし、現実の社会を見ると、「売りたい」「儲けたい」「これは客に喜ばれる筈」という自分の思い(思い込み)だけが先行してしまい、身勝手な業務活動をする人々が多いことに驚かされます。
また大昔と違い、現代は顧客を明確にする必要がある時代となっています。昔はモノが不足していましたからモノが先にあれば、それを必要とする人々が群がってきた時代がありました。この時代には「お客様は神様です」と唱え、全ての人を客と想定すれば良かったのですが、現代はモノが豊富になり客の欲求水準も高度なものになっています。その結果、どんな顧客を主たる客にするのかを明確にしないと中途半端なことを行ってしまうことになり、成果があがらない結果を招き易いのです。
私の顧問先に居酒屋チェーン店を営む会社があります。この企業は社歴10年強の若い会社ですが、「20代後半の若い女性が友達と楽しく会話しながら食事を手頃な価格で楽しむ場を提供する」ことを事業目的にしています。私が大学生の頃には「養老の滝」という居酒屋がありよく行ったものですが、ここは男性サラリーマンが安くお酒を飲む場を提供するお店のようでした。また、牛丼の「吉野家」さんは最近は多少は変わり始めたようですが、昔しはどちらかというと男性の肉体労働者を顧客としていたようです。それに対して「すきや」さんは家族づれでも女性でも牛丼が楽しめる場を提供されているようです。その結果、「吉野家」さんと「すきや」さんとではメニューが違い、また店づくりも違います。
そして、一番大切なことは「顧客が価値ありと認めるものに自分が如何にして貢献するか」を考えることです。このときは、自分の「強み」「弱み」と「競合相手」の状態を考慮したうえで顧客の「真のニーズ」を満たすことが必要です。
そして絶対に忘れてならないことは、「タイミング」です。「いつ」「どのタイミング」又は「いつまでに」顧客のニーズを満たすのかを熟慮する必要があります。

2012年4月19日木曜日

PFドラッカー365の金言より のオマケ 4

<< 本文 >>  私が最も重視しているPFドラッカー先生の言葉です。
成果をあげる者は、仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。
何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。
次に、時間を管理すべく、時間を奪おうとする非生産的な要求を退ける。
そして最後に、得られた時間を大きくまとめる。

(コメント)
少々、意味難解な教えです。
私は、仕事で成果をあげるためにはその仕事に「集中」することが大切である。
そのため、仕事を始める前に「集中できる時間」を確保することが必要となる。
集中できる時間を確保するためには、非生産的な仕事(例えばテレビを惰性で見る、意味の無い世間話しや噂話しをする等の成果を生まないこと)を止めることが必要である。
非生産的なことを止めて時間を確保し、更には雑用によって分断されがちな自分の時間を纏め、大きな時間の固まりを確保することが必要である(会社によっては電話取次・打合せ等を禁止する時間帯を設けて社員が自分の仕事に集中できる時間帯を設けている会社もあります)。
その上で、その時間帯に集中して仕事に取り組むことが成果をあげる秘訣だと先生は教えられています。
そして、大きな時間の固まりを確保できたならば、自分がしなければならない仕事に優先順位(「重要性」と「緊急性」)をつけ、優先順位の高いものをその大きな固まりで処理するようにすることが必要です。
何故ならば、人間は集中するとその人の持つ能力以上の力を発揮することができますが、集中しなければその人が持つ力以下の能力しか発揮できなくなるからです。
優先順位の低い仕事は空いた時間を利用して処理していきます。
電話やインターネットが普及して情報が氾濫する世の中では、自らの時間を如何に管理していくかが成果をあげるための大きな秘訣となります。兎に角、注意すべきことは「惰性・習慣に流されない」ようにすることです(「日々新たなり」の気持ちが大切)。

2012年4月18日水曜日

PFドラッカー365の金言より  のオマケ 3

問題解決のために経営資源(特に時間)を費やすよりも、機会を活かすことに経営資源を使え!!

(コメント)
社会保険労務士&経営アドバイザーという業を行っていると、「問題」解決するのに時間を費やしている会社が如何に多いかということに改めて驚かされます。みなさん、問題が発生してしまってからご相談に来られます。しかし、問題として発生した後では打てる手立てが限られてしまうのが実情です。予防措置を講ずるのに比較すると、問題が発生してしまってから解決するには3倍以上の時間と労力が必要となると言われます。
ブレイクスルー思考法では、「壊れる前に直せ」と教えます。
問題は発生してから解決しようと考えるのではなく、予め対策を講じることで問題が問題とならないようにすることが大切です。即ち、解決すべき「課題」の間に解決することで問題とならないようにしてしまうのです。
将来問題になりそうなことを予め見つけ出し(この段階では問題ではなく「課題」に過ぎない)、その課題に優先順位をつけて解決していくことが大切です。こうすることが、最終的には時間を節約して経営資源を有効に活用することになります。

2012年4月17日火曜日

PFドラッカー365の金言より のオマケ 2

<< オマケ >>
失敗する罪よりも行動しない罪の方が大きい。最高の計画と言えども計画だけでは意図に過ぎない。

(コメント)
私が若い頃に聴いたセミナーで、警備保障会社のセコムの創業者のお話しがあります。
その方いわく、
「起業して暫らくたった頃、自宅に「あなたのやっている事業は私も考えていた」という電話がシバシバあった」ということで、
その方はこのような電話には
「ありがとうございます。あなたが実際に事業として行わなかったお蔭で私は成功することができました」と言われたさうです。
考える、思うだけなら一定レベル以上の人であればだれでもできます。しかし、実際にコトを起すと、当初は予期しなかった困難に遭遇し、その都度打開していかなければなりません。従って、「考えていた」ということと「実際に行動した」ということとは天地ほどの差があります。
考えていても失敗することを恐れて実行しなければ真剣に考えていたとは言えません。先生の言葉を借りれば、それは「良き意図があったに過ぎない」ということになります。
私は、人生において考え抜くことは大切なことだが、実行することはそれ以上に大切なことだと思っています。実行しながら修正していき、最後に目的を達成することが大切ではないかと思います。

2012年4月16日月曜日

PFドラッカー365の金言より のオマケ 1

前回(第255回)で書籍「PFドラッカー365の金言」から私が抜粋した記事は終了です。先生の教えは365日分あるのですが、中には政府のこと他、企業経営にはあまり関係のない社会現象の変化が記載されていますので割愛した結果、365のお話しが255回で終了しました。
最後に、それらの先生の教えの中で私が特に好きなものを7つほど選んで7日間に分割して記載させて頂きたいと思います。

<< オマケ-1 >>
①機会は自ら見つけるものであり、やってくるものではない。
②チャンスの女神は、準備している者だけに微笑む。
③チャンスの女神に後ろ髪は無い。

(コメント)
①&②準備していなければ、機会(チャンス)が訪れても、そのチャンスに気づくこともなく、また活かすこともできもせん。普段から問題意識を持ち、準備しておくことが必要です。そして更には、チャンスは自ら仕掛けて創り出すことが必要です。「思っているだけ」「考えているだけ」ではチャンスは活かされません。
しかし、この時に注意すべき点があります。一般的に、人はチャンスを直ぐに創り出そうとして無理をしてしまいます。無理をして創り出したチャンスは、チャンスの方から逃げて行ってしまいます。そうならない為には、チャンスを生み出す「流れ」を創り出すことが必要です。チャンスの流れを創り出すためには、小さな歯車から廻し始めて、徐々に勢いをつけ、そのうちに大きな歯車が回せるようになることが必要です。
③チャンスに気づかず過ぎ去ったあとでチャンスに気づく人は多いものです。こうならない為にも、普段から問題意識を持ち、それをメモにしておくことが大切です。

2012年4月15日日曜日

PFドラッカー365の金言より 255

<< 本文 >>  「未来企業」
NPO(非営利法人)の成功の根底にあるものがマネジメントである。40年前、NPOにとってマネジメントとは営利活動を意味する汚い言葉だった。NPOは営利とは無縁であることを誇りにしていた。
しかし今日、NPOの大半が、収支という基準を欠いているからこそ企業以上にマネジメントが必要なことを知っている。NPOは善を為すためにある。だが、今日彼らは、良き意図といえども、組織、リーダーシップ、責任、仕事、成果に代わることはできないことを知っている。

(コメント)
昨年、労働紛争のご相談があるNPOからありました。数か月間、ご相談に応じていたのですが、お話しは段々とNPO内部の人間関係に終始するようになってしまいました。当初から私は「どんな成果があがったらNPOの目的が達成されつつあると判断されるのですか?」とお尋ねし続けてきました。要するに、目的が共通していない、目的が明確でなく各自が自分なりの目的を持っている、そのため目的達成の為の手段・方法が適切なものでなく、かつその成果を評価する物差しがない(企業の場合には「利益」という物差しがある)から、NPOが組織として纏まらない結果となり、中には甘えや驕りが入り混じり、組織が組織として機能せずに単なる人間集団に終始してしまっているのではないかとお話しし続けてきました。結局、NPOの評価は個人の感情(好きか嫌いか)で判断せざるを得ない状態となっている訳です。
その後、このNPOさんはご相談に来られなくなりましたから、労働紛争がどのようになっかは分かりませんが、このような事例は一般企業でもよくある事例です。私財を投入して赤字の企業を存続させ続けている社長さんも沢山いらっしゃいます。この場合は、確かに一般企業なのですが、価値判断の基準が利益ではなく、企業の存続維持だけに終始していますから、事業再生は大変に難しいものになります。大半の場合は、社長の私財が底をつき、社長個人の感情による判断と評価ではなく、利益を上げ会社を維持しなければ倒産してしまうということを社長が本当に認識したときからが事業再生となってしまう場合が多いようです。
企業を存続させ、かつ将来への投資資金が確保できるだけの「適正利潤」を得ることは必要なことです。利益とは汚い言葉ではなく「社会への貢献を示す指標」だと私は考えています(暴利を貪ることには反対しますが)。組織から「共通の目的」「それに基づく目標」「実績に対する評価基準(≒利益)」が無くなったとき(不明確になったとき)に、その組織は衰退への道を歩み始めるのではないでしょうか?

2012年4月14日土曜日

PFドラッカー365の金言より 244

<< 本文 >>  「マネジメント・・・課題、責任、実践」==>本文が少々解り難いのでアレンジしています。
人の強みを生かし組織として成果をあげることが、マネジメントの権限の基盤である。

(コメント)
マネジメントの権限の根拠は、「人の強みを生かすこと」であると先生は随所で指摘されています。メンバーそれぞれの「強み」を組み合わせて生かすことで、それぞれの「弱み」を意味のないものにし、組織としての目的を達成すること(=成果をあげること)がマネジメントの役割であり、権限の根拠であるということです。
従って地位に甘んじて一方的な指示や命令ばかりを出す人(上司)、あるいは逆に全くの自由放任で指示も命令も出さない人(上司)には、マネジメントが持つ権限の根拠が無いことになります。
マネジメントの目的は「組織の目的を達成すること」ですから、組織の目的が達成できるようにメンバーの強みを生かした対策を練り、その上でメンバーに指示・命令を出すことが必要となります。

2012年4月13日金曜日

PFドラッカー365の金言より 243

<< 本文 >>  「ミーティング・ザ・マインズ」「アクロス・ザ・ボード」
仕事ができる人は、仕事を楽しむ。全てが面白い訳ではない。決まりきったこともしなければならない。決まりきったことは山ほどある。決まりきった仕事は、「指に命が宿るまで」習慣化することが大切である。しかし、決まりきったことでも楽しむことはできる。
仕事を楽しむ人についても同じことが言える。彼らにも同じように決まりきったことがある。しなければならないことがある。しかし、仕事は楽しい。
組織にも違いがある。凡庸と一流の違いというよりは、学んでいる組織と学んでいない組織の違いである。前者は組織さのものが成長している。後者は仕事はできるかもしれないが、5時を過ぎれば忘れられる組織である。

(コメント)
私は「飽きっぽく新しいモノ好き」なので身に染みる教えです。新しいことには興味深々なのですが、慣れてくると飽きて興味がなくなってしまうのです。なんとか克服しようと毎日心しています。
いまの生業である社会保険労務士という仕事にもハローワークや年金事務所への諸届代行という仕事があります。これなどは定型的なものですから飽きてしまいます。しかし、基本的なことですから蔑ろにしないように心しています。考えなくても体が動く位に体で覚える(体に染み込ませる)ようにしています。しかし、最近は法改正が頻繁にあり、また手続きも頻繁に変更されるので、比較的にワンパターンですが多少は面白く感じています。
それに対して、経営相談や個別労働紛争の相談は、それぞれのご相談に特徴がありますから、解決する基本パターンはあるにしても、それぞれの相談はユニークであり、類似した相談といえども真因が異なる場合が多いので解決策はその都度慎重に考えるようにしていますから面白い仕事です。

2012年4月12日木曜日

PFドラッカー365の金言より 242

<< 本文 >>  「ネクスト・ソサエティ」
知識労働者にとっても報酬は大事である。報酬の不満は意欲をそぐ。しかし、意欲の源泉は別のところにある。
知識労働者にとって重要なことは、
①組織が何をしようとしており、どこへ行こうとしているかである。
②責任を与えられ、かつ自己実現することである。そのためには適した仕事に配置されることである。
③継続学習と継続訓練の機会を持つことである。
④敬意を払われることである。特に、自らの専門分野が敬意を払われることである。
⑤その専門分野では自らが決定を行うことである。

(コメント)
現代の従業員の大半が知識労働者であることを考えると、この先生の指摘は、経営者の「発想の転換」が必要であるということです。やり方や方法だけではなく、従業員に対する考え方や接し方、あるいは権限移譲・職掌に関しても考え方を改めざるを得ません。そこでは、従業員との関係を上下関係で捉えるのではなく、パートナーとしての関係で捉えることが必要になります。リーダーが「教えて導く」という考え方から、「共に働き、共に学び、共に進むべき道を見出していく」という関係をつくりあげていくことが必要となります。その結果、マネジメント、リーダーとしての役割が大きく変わることが必要となります。
昨日、ある人から電話で「工場の生産性をあげるための方法」を問われました。その人は「インセンティブを設けること」を検討されていましたが、私は「インセンティブだけに頼って生産性を上げようとする方法は馬の目の前にニンジンをぶら下げて早く走らせようとするようなものです。その対策だけでは、いずれ息切れしてしまいます。作業を標準化したり計画化すること、目標を設定すること等も必要なのですが、一番大切なことは経営参画意識を従業員に浸透させて良い社風をつくりあげることです」とお話ししました。その人とお話しをしていると、古典的経営学にでてくるテイラーによる生産効率化のお話しをお聴きしているようでした。

2012年4月11日水曜日

PFドラッカー365の金言より 241

<< 本文 >>  「非営利組織の経営」
成長に必要なものは「責任」である。あらゆるものがそこから始まる。大切なのは「肩書き」ではなく「責任」である。責任をもつということは、仕事に相応わしく成長したいといえる処まで真剣に仕事に取り組むことである。責任に焦点を合わせるとき、人は自らについてより大きな見方をするようになる。
自己啓発に最大の責任を持つものは、本人であって上司ではない。

(コメント)
成長する人は、与えられた仕事で一流になろうとします。その結果、その仕事で必要となる事柄を学習し、成長します。与えられた仕事に責任を持とうとして真剣に取り組みます。そこでは「肩書き」「地位」「権限」は関係ありません。自らに権限が無い場合には、その権限を持つ人を巻き込み協力してもらいます。
「権限がない」「地位ではない」「肩書きがない」というのは「出来ない理由探し」にしか過ぎません。成長する人は、丁度「大きな時計の歯車を最初はユックリ、ユックリと回し始める」ように、責任を果たすために一途に学習を続けて成長していきます。
成長した結果として、「肩書き」「地位」「権限」が後からついてきます。

2012年4月10日火曜日

PFドラッカー365の金言より 240

<< 本文 >>  「創生への時」
10年、15年にわたって有能だった人が、なぜ急に無能になるのか?
私が見てきた限り、原因は、それらの例のほとんどにおいて、昇進した人が、前の任務で成功したこと、昇進をもたらしてくれたことを新しい任務においても行い続けることにある。その挙句、無能な仕事しかできなくなる。正確には、無能になるのではなく、たんに間違ったことを行うために無能な仕事しかできなくなるのである。
新しい仕事を行ううえで必要なことは、卓越した知識と才能ではない。それは新しい任務が要求するもの、新しい挑戦、仕事、課題において致命的に重要なものへの「集中」である。

(コメント)
『失敗しようとして失敗する人は愚か者であり、そんな人はほとんどいない。人が失敗するのは、自分の過去の成功体験に拘り、状況が異なることを意識しなかったときである。』と言われます。またブレイクスルー思考法ではユニーク差の原則と言われ、それぞれの事象には独特のものがあるからそれを判別することが大切であると教えます。
課長から部長に昇進した、部長から取締役に昇進できた。このときに、どうしても人間は過去の自分の成功体験を元にその後も判断しようとしてしまいます。しかし、それぞれのポジションは、組織においてその果たすべき役割と権限が異なります。権限を行使して役割を果たし組織が期待する成果を上げるためには、自分の過去の成功体験を参考にするが拘ることなく、いまのポジションに期待される役割に集中することが必要です。

2012年4月9日月曜日

PFドラッカー365の金言より 239

<< 本文 >>  「マネジメント・フロンティア」
従来の組織は「権限」に基礎をおいていた。これからの情報型組織は「責任」に基礎をおく。
情報を中心に組織を構築するには、誰が、どのような情報を、いつ、どこで必要としているかを考えなければならない。
情報型組織が必要とするのは、現場監督者からトップにいたる「自己規律」と「責任」である。
情報型組織は、組織内の個人および部門が、自らの目標、優先順位、他との関係、コミュニケーションに責任を持つときにのみ有効に機能する。そうしてはじめて迅速な意思決定と対応が可能となる。情報型組織の利点は、組織内に「相互理解」と「共通の価値観」、なかんずく「相互信頼」があって現実のものとなる。
演奏者一人ひとりが楽譜をもつためには、共通の言葉、共通の核がなければならない。情報型組織の場合、資本が唯一の核であるような多角化は、バブルの塔のように崩壊する。

(コメント)
情報を活用するためには、その情報を誰がいつ必要としているのかを知っておくことが必要です。情報は時間の経過と伴に陳腐化しますから、モノづくりと違って完成したモノが予め出来上がっていれば良いというものではありません。そのために組織内おいて「相互理解」が必要となることは言うまでも無いことです。
そして、情報は取捨選択され伝達されていきますから、組織内において「価値観を共有」しておくことが必要です。
そしてその為には、各自が自らの目標、優先順位、他との関係、コミュニケーションに「責任」を持ち、「自己規律」を保ち職務遂行をすることが必要となります。
その結果、現代社会では、企業は自立した意識を持つ従業員を育て、価値観を共有し、相互理解に努めさせる工夫が必要となります。
本文末尾の事例として、私の顧問先に土木建築・証券・コンピューターソフト・ゴルフ場を営む企業グループがありました。昔しは、企業名はそれぞれ別々でしたが、金融面では繋がっていました。しかし、創業者が死去して数年経ち、経済環境が悪化すると、それぞれの企業の価値観に差異が生じ始めました。結論としては、各企業の金融的関連性を絶ち、それぞれが自立した連邦型企業グループ(緩い関係)として存続・発展を図る道を選択されることになりました。創業者によって統一されていた価値観が分裂した結果ではないかと推測しています。

2012年4月8日日曜日

PFドラッカー365の金言より 238

<< 本文 >>  「新しい現実」
情報型組織が成立する条件は、全員が情報に責任を持つことである。
成功の鍵は、自分の情報を必要としているのは誰か、それはどのような情報か、逆に自分は誰の情報を必要としているのかを全員が自問することである。

(コメント)
組織は、その構成員の一人ひとりが組織の追い求める目的・目標に貢献して初めて成果を上げることが出来ます。そして、その上で各自が役割を分担しています。そのため、自分の役割を遂行している過程で得た情報を誰が必要とし、またどんな情報を必要としているのかを知らなければなりません。これを知らなかったがために、情報を見落とし、または伝達し忘れて衰退・消滅していった組織は歴史をひも解けば枚挙にいとまがありません。そのため、組織で情報が活用されるためには、目標・目的を全員が共有し、それぞれの役割分担を相互に理解することが大切です。
現場(営業)は顧客の情報を知っている。技術・開発は技術的情報を知っている。社長は経営に関する情報を知っている。しかし、顧客の情報を活かすことができて初めて技術・開発の人も社長もその目的・目標を達成することができます。何故に顧客情報が技術・開発や社長に伝わらないのか悩んでいる組織は、「目的・目標の共有」と「役割分担の相互理解」についてできるだけ具体的に再考してみることが必要です。

2012年4月7日土曜日

PFドラッカー365の金言より 237

<< 本文 >>  「新しい現実」
情報型組織に必要な条件は何か?
オーケストラにおいて、一人の指揮者のもとで10人の音楽家が演奏できるのは、全員が楽譜をもっているからである。病院では、あらゆる専門家がルテを楽譜の代わりにして共通の任務についている。楽譜やカルテは、全員にとるべき行動を教える。換言するならば、情報型組織には、具体的な行動に翻訳できる明確で単純な共通の目標が必要である。情報型組織は、期待する成果を表現した目標を中心に組織しなければならない。更には、期待と成果についてのフィードバックを中心に組織しなければならない。

(コメント)
ホテル・リッツカールトンは全従業員が会社の行動規範を持ち歩いていて、顧客へのサービス提供はその行動規範を元に従業員自身が判断するそうです。
リッツカールトンやディズニーランドなどを事例として「企業理念」の大切さが叫ばれてから久しいものがあります。しかし、企業理念も難しい言葉が使ってあったり、抽象的な表現になっていたのでは使いようがありません。判り易いことが必要です。判り易くするためには、企業理念を行動規範にまで落とし込むことが必要です。その上で、毎日の朝礼で具体的事例を発表して、行動規範の解釈の仕方を繰り返し発表して、解釈方法を統一化し、行動規範を頭で理解するのではなくお腹(胆)で理解する事が必要です。
PFドラッカー先生はここで「目標」という表現をされていますが、私は「行動規範」のことを言われたいのではないかと考えます。
頭で理解する・・・解る
心で理解する・・・善悪の判断がつく
お腹(胆)で理解する・・・体に染み込むくらいに理解しており、無意識のうちに行動として現れる

2012年4月6日金曜日

広島の平和公園の桜

小雨の中を急いで撮ったのでピンボケですが、広島の平和公園の桜が咲き始めました。芝生の上には場所取りの洋上シートが敷いてありました。

PFドラッカー365の金言より 236

<< 本文 >> 「すでに起こった未来」
短期と長期の両立こそ、マネジメントにとって決定的な試金石がある。イノベーションと生産性が道しるべである。イノベーションと生産性を犠牲にした利益は、利益ではない。資本を食潰しているに過ぎない。逆にイノベーションに成功して生産性を向上させるならば、必ず利益を上げることができる。今日だけでなく、明日も利益をあげることができる。
知識は仕事に適用されて富の源泉となる。仕事に適用されない知識を有していても、単なる情報通(モノ知り)に過ぎない。そこに企業の機能がある。

(コメント)
私は事業活性化のお手伝いをするときに必ず「1人1時間当たりの生産性」を指数として毎月チェックするようにお勧めしています。業績不振に陥っている企業ですから、従来通りのことを継続するだけでは決して事業活性化を実現することができません。しかし、何を行えば事業活性化を果たすことができるのかは中々判断し難いものです。そこで、最初に十分なコーチングを行ったうえで何か新しいことを始めてもらいます。最初の間は「1人1時間当たりの生産性」は無視して、生産性(利益額)の変化だけを注視しています。売上高は生産性を示す指標ではありません。そして、新しいことの中からより効果の高いものを取捨選択して、それに集中するようにして貰います。こうして危機的状況が乗り切れ体力的に少し余力ができる兆しが見えたら、直ちに将来に向かっての投資をおこなって頂きます。そして、この一連の事業活性化の過程の中で、特に重視するのが人材の育成です。「将来に向かっての投資」というと、何かの設備投資を連想する人も多いと思いますが、私は人材を人財に育てる投資こそが本当の意味で将来に向かっての投資であると考えています。
いにしえの言葉に「一人の人によって国は興り、一人の人によって国は亡びる」とあります。
また、どんなに優秀な設備や機械、あるいは豊富な資金があったとしても、それを使いこなせる人財がいなければ、企業は存続・維持・発展のために必要な利益を確保することは難しくなってしまいます。
しかしながら、人財の育成には時間がかかります。「人材」は雇うことができますが、「人財」を雇うことは難しく育てるものだと言います。従って、人財への投資が本当の意味で「将来に向かっての投資」であると考えています。
長期と短期のバランスをとることがマネジメントの宿命です。目先の利益最大化だけを目指していては明日は保証されません。しかし、いまの利益が確保されなければ明日の準備はできません。人のもつ知識と経験を活かして今日の利益を実現し、そのことを通じて知識と経験の幅またはレベルを高めることで明日への準備をしていく仕組み創りが組織には必要です。

2012年4月5日木曜日

PFドラッカー365の金言より 235

<< 本文 >>  「ポスト資本主義社会」
知識の生産性をあげるには、色々な専門知識を「結合(統合)」することを学ばなければならない。
学んだり教えたりする上では、道具に焦点を合わさなければならない。しかし、仕事をする上では、成果、課題、仕事に焦点を合わさなければならない。
結合(統合)するには、問題解決の方法論よりも問題定義の方法論が必要である。知識や情報の分析とともに、問題への取り組みにかかわる方法論が必要である。
従って、意思決定にあたっては、方法論よりも問題の定義に時間を割くべきである。

(コメント)
インターネットが普及したので、情報を得ることは容易になりました。しかし、自らの問題・課題を解決するためには、手に入れた色々な情報・専門知識を結合(統合)して解決を図る必要があります。そして更に、自らの本当の問題・課題が何であるかを間違えていると、どんなに良い解決方法を考え出しても、本当の問題・課題が解決されることはありません。従って、方法論を説く前に、本当の問題点(真因)を解明することが大切です。
社会保険労務士としての業を行いながら、各企業さんから色々な問題・課題のご相談を承っていますが、問題・課題を捉え間違えていらっしゃる場面によく出くわします。これでは、どんなに一生懸命に頑張っても、本当の問題・課題が解決されることは無いのです。そして、一番多いのは、真因を解明して方法論を説明すると、「知っとる、知っとる」と言われる人です。いざ、このような人に実行してもらうと出来ないことが多いのです。何故なら、私が提案する解決策は色々な専門知識を結合(統合)したものですから、断片的な専門知識を知っていても活用できないのです。
私は何かご相談を頂いたときに、ロジック・ツリーを描くようにしています。ロジック・ツリーを用いることで、漏れやダブリを防ぎ、それぞれの情報・知識・方法を結合(統合)するのです。ロジックツリーを描くことは一見、手間のかかる作業ですが、結果的にはこの方法を最初にやる方が有効かつ効率的に問題・課題の解決を図ることができるのです。そして、その際には必ず「本当の原因(真因)」は何なのか?を考えるようにしています。

2012年4月4日水曜日

PFドラッカー365の金言より 234

<< 本文 >>  「明日を支配するもの」「知識労働者の生産性」
今日、知識はいかなる分野においても急速に変化している。そのため、知識労働者は自らの仕事に継続学習を組み込んでおかない限り、急速に時代遅れとなっていく。
しかも知識の専門家たる者は、同僚が何をしているかを知らなければならない。それぞれが別の専門領域にあり、連携して一つの成果を成し遂げるからである。従って、知識労働者は自らの専門領域について同僚に知らせる責任を持つ。特に専門領域において知識上の変化があったときに、このことが言える。
ということは、知識労働者たる者は、
第一に、自らの専門領域において知識の最先端にある為には自らが何を学ばなければならないか、
第二に、自らの専門領域とその貢献について同僚は何を知らなければならないか
について本腰を入れて考え、答えを出さなければならないことを意味する。

(コメント)
継続学習を続けなければ、知識が直ぐに陳腐化する時代であることは明らかであると思います。余り変化しないものと考えられていた法律でさえ、ここ数年で様変わりし始めています。社会保険労務士として業をなしていると、企業の総務担当者が一昔前の法律しか知らない場面をよく体験します。
また、パソコンを初め通信機器に関しての変化は目まぐるしいものがあります。
そして更に、先生がここで言われたいことは、「仕事は自分一人でできるものではなく、他に協力者がいて初めて成果があがるものだから、自らが継続学習を続けることは当然のこととして、更に協力者にもその変更点・改正点だけは連絡をしておく必要がある。その為には協力者が有効な協力者であるためには何を知っておく必要があるかを知らなければならない」ということだと思います。
例えば、私は社会保険労務士として業をなしています。社外から社内の人事・労務に関する仕事をサポートしている訳ですが、企業内部の情報が私に正しく伝わってこないと仕事ができません。その為、企業内部に私への連絡窓口を設けることを依頼しています。そして、私はその窓口になった人に私に伝えるべき情報は何であるかを予め伝えています。こうして業務を開始すると、後は業務処理を繰り返しながら、その窓口になった人に段階的に必要最低限の法律知識を教育していきます。
いま、ある企業の給与体系と評価制度の洗い直しを行っていますが、この場合にも、総務の2名(部長と課長)に対して約半年間に渡り基礎知識を教育します。こうして私に正しい情報が伝わる状態を創り上げたうえで、技術的な変更手続きを開始します。不思議なもので、このやり方を取ると、現在の2名もそうですが、副産物として経営者意識が芽生えてくるのです。私のスタンスは、「先生が来て教えてくれて新しいものを創ってくれる」(結論だけを求めるときにはこの方が早いのですが)というものではなく、「共に悩み、共に学習・研究し、共に創り上げていく」というスタンスです。こうすると時間はかかりますが、給与体系だけでなく組織の中で色々な新しい動きが起こり始めます。

2012年4月3日火曜日

PFドラッカー365の金言より 233

<< 本文 >> 「企業とは何か」
人間社会に関わる事柄について重要なことは、「正しい」か、「間違い」かではない。「うまくいく」か、「うまくいかない」かである。常々言っていることだが、マネジメントは神学ではない。実学である。マネジメントの値打ちは、医学と同じように、うまくいくか、いかないかによって判断しなければならない。もちろん私は、基本的な価値、特に人間の価値を信ずる。しかし、唯一無二の答えというものは信じない。いかなる答えにも誤りがある恐れがある。少なくとも、あらゆる答えを試してみるまでは、その恐れがある。経営政策というものは、人が考えたものである以上、唯一絶対たり得ず、せいぜいの処、正しい問いを見つけるための問題提起に過ぎない。

(コメント)
この指摘は非常に重要だと考えます。得てして、考え抜いて得た結論を実行しようとするときに絶対に正しいと思い込んでしまう傾向があります。ある反面では、そう思えなければ成功するものさえ失敗してしまうことがあります。しかし、ここで大切なことは「絶対に正しい」と独善的にならないことが必要です。
まず何かをやり始めようとするときには、その「ことの善悪」を考えることが必要です。そして次に、それを実現する方法を考えるときには、何が正しいか、何は間違えかではなく、どうすれば上手くいくかと考える必要があります。最初にその目的を考えるときには「善悪の判断」は必要ですが、達成する方法を検討するときには「善悪」の判断ではなく、「どうすれば上手くいくか」の判断が必要です。同じ目的を達成するにしても、協力してくれる人達が異なり、顧客が異なり、地域も異なり、経営資源の貧富も異なる訳ですから、いかなる状況下でも絶対的に正しい方法というのはあり得ないのです。しかし、人間の性としてのリーダーの「思い込み」により、得てして絶対に正しいと考えてしまい、上手くいく方法を排除してしまう傾向があるので注意を要します。
これを防ぐには、「聞く」「聴く」「訊く」ことが必要であると考えます。

2012年4月2日月曜日

PFドラッカー365の金言より 232

<< 本文 >>  「明日を支配するもの」
高度の知識を必要とする知識労働において、既に我々は仕事の質を測定している。心臓手術など難度の高い手術については、成功率によって外科医の腕前を測定している。
だが、問題は測定にあるのではない。そもそも仕事が何であり、何でなければならないのかを明確に定義できないことにある。
その良い例がアメリカの初等教育である。都市部の公立学校がひどい状況にある。その公立学校のすぐ隣に、同じような子供を相手にしながら立派に躾けをし、学ばせている私立学校がある。違いの原因については様々なことが言われている。だが、最大の原因は仕事の定義が異なることにある。
公立学校では、恵まれない子供を助けることを仕事としているのに対し、私立学校とくにカトリックのミッション・スクールでは、学びたい子供が学べるようにすることを仕事としている。前者が失敗を基準としているのに対し、後者は成功を基準としている。

(コメント)
この先生の文は難解です。しかし、言われたいことは理解できます。「何のために」と問うことが大切であり、目的を明確にしたうえで行っていることの進捗状況を測定しないとトンデモナイ方向に行ってしまうこと、進捗状況や成果を評価する尺度や基準は目的に沿ったものを選択しなければならないということではないかと思います。
教育という同じ行為を行う学校でさえ、アメリカでは公立学校と私立学校とでは目的が違うから自ずからその成果にも差が生じてしまうと言われたいのではないかと考えます。そして、企業においても同様のことが言えると先生は言われたいのではないかと思います。同業種の企業でも、その目的(=企業理念)が違うから、これからやるべきこと、選択すべき道に違いが生じ、成果に対する評価にも差がでることを指摘されたいのではないかと考えます。
私の顧問先に2つのゴルフ場があります。一つは一般企業ですが、残りの一つは社団法人です。社団法人と一般企業とでは目的が違いますから、同じゴルフ場でも業績を評価する際には評価時に使う指標に差があります。そして、選択すべきこれからの道にも差が生じます。

2012年4月1日日曜日

PFドラッカー365の金言より 231

<<  本文>>  「明日を支配するもの」「知識労働者の生産性」
仕事の定義が、もたらすべき成果を明らかにする。しかし、何を成果とすべきかの答えは複数ありうる。デパートの場合、買い物一回当たりの売上げかもしれないし、リピート率も正しい。
知識労働者の生産性向上には、あげるべき成果を明らかにすることが必要である。見方は分かれて当然である。リスクもともなう。しかも、知識労働者自身の目的と組織の目的が一致しなければならない。
買い物一回あたりの売上げとリピート率のいずれを成果とするかは、それぞれのデパートのマネジメントが決定することである。知識組織においては、この種の決定が変わることのない重要な問題となる。

(コメント)
「何のための仕事なのか?」「この仕事をすることで会社はどんな目的を達成しようとしているのか?」を考え、もたらすべき成果・結果(=目的)を明らかにすることが非常に大切な時代となっています。そうしなければ、やらなくても良い仕事、つくらなくても良い資料など無駄なことをやってしまうからです。
その上で、仕事を遂行する途中で達成度合いを測定するために「目標となる指標」と「期間」を定めなければなりません。これがなければ、やっていることが目的に沿った成果をあげつつあるのか、それとも目的とは違うことをやっているのかさえも判断できません。目標となる指標がなければ、時間だけが無駄に経過し、成果があがるか否かは全てが終わらなければ分からないという博打的な状況になってしまいます。
肉体的労働であれば成果は目で見ることができますが、知識的労働は成果を目で見ることは難しい場合が多い(特に途中経過)ので、先生が言われるように「目的を明確にして」「期間を定め」「達成度合いを測定する指標(目標)」を事前に決めておくことが必要です。何故なら、現代社会は、また特に知識労働は一人でやるものではなく、他の人に利用されて初めて成果となるものですから、他の人にもわかる状態にしなければならないからです。
最近の実話として、ある会社の営業開発部の部長を評価する必要がありました。既に過去3年間にわたり大きな目標を立ててチャレンジすると発表していましたが、いつまで経っても成果があがりません。そこで会社としては、そのプロセスを明らかにするように求めましたが本人は話しを濁して明らかにしようとしません。その為、やむなく実績数字で評価することにしました。その結果、ハッキリと判ったことは、その部長の部門は過去3年間の自部門の人件費さえ稼ぎ出しておらず、平均的営業社員の半分程度の利益しかあげていないことが分かりました。そこで、会社としては部長に今後の明確な計画を明らかにするように要求しましたが、部長は「頑張ります」「是非、続けさせてくださいる」「お願いします」というだけで一向に計画さえもあきらかにしようとしません。その結果、会社としてはその部長を降格せざるを得ないと言う結論に達しました。
この部長はモバイル通信分野、デジタルサイネージ、LEDなど時代の最先端の市場に進出すことを目論んでいたのです。これらの市場は拡大していますから、やり方によっては大きな成果を達成することができます。しかし、その分、競争も激しい市場ですから、中途半端なやり方では敗退してしまうのです。そこで会社としては、成果が上がらない現状を踏まえて、この部長を手助けしようとしたのですが、部長が計画も過去のプロセスも秘密にしてしまうので、会社としてはこのような部長では手助けすることができないと判断した次第です。