2012年1月6日金曜日

PFドラッカー365の金言より 146

<< 本文 >>   「すでに起こった未来」
シュンペーター(経済学者)は、イノベーションこそ経済の本質、特に現代経済の本質であるとした。その経済発展理論は、利益に経済的な機能を与えた。
変化とイノベーションの経済にあっては、利益は、マルクス(社会主義経済学者)とその理論がいうような労働者から搾取した余剰価値ではない。それどころか、利益は雇用と所得の唯一の源泉である。シュンペーターの経済発展の理論は、イノベーターだけが真の利益を生み出すとした。ただし、そのイノベーターの利益は短命であるとした。
シュンペーターの有名な言葉によれば、イノベーションとは創造的破壊である。それは、昨日の投資を陳腐化させる。今日利益をあげている事業が、明日は金食い虫になる。従って、経済が発展するほど資本形成が必要になってくる。

(コメント)
何か、難しいことを先生は言われているような気がしますが、私なりの理解では、
①変化する環境(無常)の中にある企業が現状維持又は発展するためには、イノベーションが必要不可欠である。
②イノベーションを実行するにはコストがかかる。
③そのコストを補ってくれるものが利益である。利益はマルクスが言うような労働者から搾取したものではない。利益は雇用を維持し、所得を補償するものである。
④利益が確保されなければ、明日への投資であるイノベーションはできなくなる。投資(イノベーション)のためにも「利益」は必要なものである。
と言われたいのではないかと思います。
私が実務経験上で思うことは、
(a)創業したての企業(ベンチャー)が躓く一番大きな原因はここにあるということです。最初に手掛けた事業で上げた利益を「全部が儲けだ」と考えてしまい、投資に回すことを考えず、事業以外のことに食いつぶしてしまう結果、最初の成功も維持できなくなってしまうケースが非常に多いのです。
(b)明日ために投資するとしても、身の丈にあった投資をしなければ無駄な投資となってしまいます。投資したものが活かされるか否かは、それを使う人間次第です。但し、投資と投機(博打)は違うものであるといことも認識することが必要です。
また、投資はタイミング(機)が重要ですが、投資するタイミング(機)は常時あるものではありません。
従って、人を教育し人を成長させることを常に意識し実行していなければ、折角の投資も無駄に終わってしまうことがあります。明治の偉人:渋沢栄一翁も「事の成否は普段にあり」と言われています。
(c)売上高とは顧客がどれだけ「喜んだか」を教えてくれる指数、利益額は自分達がどれだけ「正しい努力」をしたかを教えてくれる指数と考えることが大切ではないでしょうか?
従って、会社(事業)を評価するに際して、「利益」を指標とすることが大切です。

(赤字続きなのに頑張り続けようとしている人へ)
何年やっても利益を生まず、今後の展望も無いのに頑張っている人がいます。昔しの私もそうでした。これでは明日のために投資するにもその財源が確保できません。このようなときには、何かを間違えている訳ですから、利益を生まない事業を継続させる努力をするよりも、一端規模を縮小して(場合によっては廃止して)、新たなこと・新たなやり方でチャレンジし直す方が良いと考えます(考え方を変えることが必要)。昔しの太平洋戦争のときに、アメリカ軍は初戦では無駄な抵抗を避けて引く所まで引いて態勢を立て直しミッドウェー海戦を機に反抗し始めました。それに対して日本軍は硫黄島を失い制空権がなくなった後も変な精神論で頑張り続けようとした結果、最後は無条件降伏と言う最悪の事態に陥ってしまいました。
私は約10年前に倒産してしまいましたが、倒産後に人生を振り返り、自分の今後の生き様を色々と考えた末に社会保険労務士という国家資格にチャレンジすることにしました。運よく資格を取ることができ現在に至っていますが、この生業を始めて自分の天職を得たような気がしています。正に孔子の言う「五十にして天命を知る」ではないかと思っています。しかし、自己破産はしなかったので、全ての財産を失うと同時に今でも残債務を返済し続けています。
このような状況を避けるには、恥と思ってもそれは一時のものですから、資産が残っている間に事業を縮小または廃止して、人生に再チャレンジする方が良いと考えアドバイスするようにしています。私の友人には、私同様に倒産後に別事業を立ち上げ、人生に再チャレンジしている友人もいます。ただし、大半の倒産者は世捨て人に成り果ててしまっていますが・・・。
私が倒産した10数年前と比較すると、事業整理・再生に関する制度も数段に整備されましたから、良きアドバイザーを得て、勇気をもって決断することが大切です。

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