2011年10月7日金曜日

PFドラッカー365の金言より 55

< (3)価格戦略 >
企業には製品やサービスのイノベーションが必要である。ところがここに価格の付け方がイノベーションであるという企業戦略がある。
製品やサービスそのものは変えないが、価格の付け方によって、その製品やサービスから得られる効用(≒満足度合)、価値、経済的な特性を変化させる。
顧客が本当に買っているものは何かを調べ、顧客の本当のニーズを探り当てることが必要である。
価格戦略とは、顧客に合わせて価格をつけることである(製造原価主義の正反対)。

(コメント)
有名な事例は、100円ショップでしょう。一昔前にブレイクしたユニクロのフリースジャケットもそうかも知れません。ユニクロはそれまで2万円~3万円もしたフリースジャケットをSPA生産方式により1980円にして、高級品実用品から街角でも着ることができるファッショナブルな普段着へと変容させました。
ただ、ここで注意しなければならないことは、「顧客が本当に買っているものを調べ」ということです。
ある書籍に出ていた例ですが、アメリカのサラリーマンで自家用車通勤している人の中には、朝食代わりにシェイクを飲み(食み)ながら通勤する人達がいるそうです。シェイクか余りに飲み易い(ジュースと同じように飲める)と会社に着くよりかなり早くにシェイクが無くなってしまい、残りの時間が手持無沙汰となってしまいます。従って、シェイクには飲み難い程度の粘り気が必要となります。このようなサラリーマンは時間を買っているのではないでしょうか?
しかし、昼間に子供と一緒にシェイクを買いに来る母親にとっては、シェイクの粘り気が弱い(飲み易い)方が都合が良いのです。粘り気が強いと、子供が飲み終わるまで母親はズ~と待たされることになるからです(最終の顧客は子供ではなく、母親であることにも注意が必要です)。このような母親は子供の喜ぶ笑顔を買っているのではないでしょうか?
前者のサラリーマンと後者の母親とでは、シェイクに対する期待・価値(甘さ、価格、粘り気等)が違います。あるファミレスでは、時間帯によってシェイクの甘さと粘り気に違いをつけ、価格にも違いをつけ、朝だけドライブスルー方式で販売もするようになり、売上を飛躍的に増進させたそうです。
ドリルをホームセンターで買っている顧客はドリルではなく「穴を開ける」という目的のための道具を買っています。ドリル以外のものでも穴が開けられる道具であれば、それでも構わないのです。
ユニクロのフリースの事例のように、今までは高額な実用衣料だったものを、SPA生産により価格を引き下げ手頃なファッション着にしてしまうことで、顧客にとっての価値を変えてしまうことも可能なことです。
適正価格とは、製造原価から算出される販売希望価格ではなく、顧客にとっての効用、価値、特性に見合った販売価格にすることが必要であるとPFドラッカー先生は言われているのではないでしようか? 従って、ネットのバーナー広告で軽井沢のホテル1泊198円等を見かけると、行き過ぎを感じてしまいます。
チョット違う事例にはなりますが、あるメーカーさんで製品出荷の際に間違えて空の箱を梱包して顧客からクレームが続いたことがあるそうです。そのため取締役会で協議して約3千万円の設備投資をされたそうです。その後は顧客からのクレームが減ったので取締役さん達は設備投資の効果があったと判断されていたそうですが、ある日現場に行かれ唖然としたそうです。現場では投資した設備ではトラブルが頻繁に発生するので、その設備は使用せずに、街角で売っていた5千円程度の扇風機を回し空箱を飛ばすことでダンボールに混入することを防いでいたそうです。目的を明確にして、現場の知恵を使うことで大幅な投資節減ができていた筈です。
今は違うかもしれませんが、昔しのキャノンのコピー機は内部の配線はゼロックスのコピー機と比較すると、そくなに綺麗な配線はしてなかったそうです。キャノンは内部配線に必要となるコストを削減して高価だったコピー機を一般企業でも購入できる価格に下げ、コピー機の一般普及品市場を開拓していき市場を占拠したそうです。多分、キャノンは「顧客の目的はドキュメントの写しを取ること」と明確に定義して、ムダを取り除いていったのではないかと思います。いまでは、コピーとFAXとプリンターの複合機が安価に売られるようになりましたが・・・。
「何のために・・・顧客は購入しようとするのだろうか? その目的の価値に見合った販売価格を設定すること」が大切ではないでしょうか?

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