2011年10月31日月曜日

PFドラッカー365の金言より 79

<< 本文 >>
山があるところには谷がある。
大きな強みをもつ者は、ほとんど常に大きな弱みをもつ。申し分のない人間などあり得ない。
人事において大切なことは、無難にこなす能力ではなく、一つの分野で抜きん出た能力を探すことである。よく出来る筈のことを見つけ、実際にそれを行わせなければならない。人が他人より抜きん出ることができるものは一つか、せいぜい二つか三つの分野である。
弱みそれ自体が大きな意味を持つ領域は一つしかない。「真摯さ」の欠如である。真摯さの欠如だけは、あってはならない絶対の基準である。

(コメント)
能力は訓練して習得させることができます。しかし、真摯さは訓練で習得させることは不可能です。従って、入社採用面接時の絶対条件としては、『真摯さ(真面目にコツコツと続けること)が欠如している人を入社させてはならない』ということです。能力の不足は入社後に訓練して向上または習得させれば良いのです。しかし、現実の採用では、能力重視で採用して入社後は教育もせずにホッタラカシの中小企業が多いようです。しかも、能力の高い人を採用しようとして、その人の人柄(真摯さ)を考慮していない(転職ばかりして1つの職に5~7年間定着することがないことを無視する等)場合が目につきます。これでは有能な人財を採用することも、育てることもできません。「企業は人なり」と言われるのですが、これでは企業は肥満化することはあっても本当の意味での成長をすることができません。
「その人が他の人より秀でている」ということと、「その人の長所」と違います。類似する長所を持つ他の人がいることはあり得ますが、他の人より秀でている能力に関しては、他に同じような能力を持つ人がいる場合には「秀でている」ことにはなりません。突出していることが必要になります。
そして、このような人は必ず何かの弱点(欠点)を持つことが多いようです。従って、100点満点の人はいないということです。日本の教育は全科目100点を目指し1科目でも落第点をとらないようにすることを教えますが、海外では得意とする科目で200点を取れば他の科目は落第点でも良いと教えるそうです。
大切なことは、その人の弱点(欠点)を理由にして、その人に「コトに当たらせない」という判断をしているとその問題は解決しないということです。そして、その人の弱点(欠点)を上司が補ってやることが必要となります。
政治のお話しは余りしたくありませんが、有能な政治家が出ると直ぐに野党がスキャンダルを持ち出し責任を追及します。これは日本人が平均的100点リーダーを求めている証ではないでしょうか? いまの日本の難局を乗り切るためには、片目を瞑り何かの能力に突出しているリーダーが必要なのではないでしょうか? これは企業でも一緒です。存亡の危機に陥った会社の再生をお手伝いすることが多いのですが、このようなときに活躍してくれるのは、それまで欠点人間として「落ちこぼれ族」となっていた人達の中から現れることが多いようです。何故なら、日本人が一般的に言う優秀な人は全ての面において優秀な成績を取るように習慣づけられていますから、企業存亡の危機のときのように「何かを生かすために何かを切り捨てる」という決断ができないことが多いのだと思います。
従って、順風満風の平常時ならば100点主義の可もなく不可もなく全体として他より優れている人財でも良いのですが、非常時(現代は変化の激しい非常時の連続)には何かに欠点はあるが何かに極端に秀でている人財が必要となると考えます。そして、それらの人の上司がいかにしてその人の山と谷を『目的達成のために組織全体とバランス』させるかが大切なことではないでしょうか?
尚、PFドラッカー先生は、別の書籍で、アメリカの南北戦争のときのグラント将軍(記憶間違いかもしれませんが)の事例を挙げています。この将軍は戦さは極めて上手だったそうですが、酒癖が極端に悪かったそうです。このとき当時の大統領は戦さに勝つという目的のために、大統領周辺の人達がこの将軍の酒癖の悪さを理由に総司令官指名任命を制止するにも関わらず、反対を押し切り総司令官に任命して戦さを勝利に導いたという事例です。

0 件のコメント:

コメントを投稿